花万作、アイリス、さらしヤマシダ

 万作は、日本原産の落葉低木で、庭木などでも親しまれる植物です。その名の由来は、春にいち早く「まず咲く」という言葉が変化して付けられたともいわれており、黄色いヒラヒラとしたリボン状の花が、枝を飾ります。いけばなにおいてこの花万作は、〝いよいよ春!〟とわくわくする花材の一つです。枝の形は、ある程度自由につくることができるので、線をどう見せるのか、いけ手の意図が表れやすい反面、うまく落ち着かせるのはなかなか難しい花材でもあります。

 そしてアイリス。アヤメとも呼ばれています。前回のいけばなでも使用しました。こちらも、形がユニークで、つぼみの隙間から覗かせる濃い紫色が印象的ですね。今回の花材は、飾っておくと徐々に開花の様子が見られるのも、自宅のいけばなの愉しみの一つです。

 真ん中にある、羽のような白い植物は、さらしヤマシダです。いけばなでは、薬剤で漂白したものを「晒(さら)しもの」と言い、他の花材とは異なる使い方をすることが多い材料です。花展でも時折目にすることがあると思いますが、これらは白い色とともに植物の形を生かして、滝や水の流れ、霧や霞などの表現に使用されることがあります。一見、何だろう?と思いますよね。植物の知識が増えることで、表現の奥行がみえてくるのも、いけばなの特徴の一つと言えそうです。
 今回は、白いふわっとした特徴と季節性を生かして、地面に積もる雪に見立ててみましたが、いかがでしょうか。

 まだ地面には雪が残るなか、いち早く明るい元気な花を咲かせる万作の姿に、心も明るくなるいけばなです。