秋になると、京都へ行きたくなります。

もちろん春の嵐山や新緑の宇治、年末の八坂神社や白雪の寺社など、どの季節に行ったって京都はたいがい素晴らしいです。けれど、特に人の手で造られた燃えるような紅葉の景色は、圧倒的に迫ってくるものがあります。そしてオーバーツーリズムの話題が絶えない京都であっても、やっぱり行きたくなってしまうのです。

重森三玲(1896年8月20日―1975年3月12日)は、京都の紅葉スポットで必ず名前の挙がる東福寺の方丈庭園をはじめ、多くの作庭で知られる人物です。また、勅使河原蒼風や中山文甫、小原豊雲たちとの交流により1930年に「新興いけばな宣言」を起草するなど、お庭だけでなく華道や茶道に造詣が深く、積極的に評論活動を行っていました。

本著は、重森の著作の中から庭について記した評論を再編集した一冊です。庭園という芸術の見方を作庭家である重森ならではの視点で著した文章は、とても読み応えがあります。そして、1950年代から1970年代半ばまでに書かれているにもかかわらず、今読んでもまったく古くなっていないことへの驚きがあります。このような骨太の文章は、やはり書籍ならではの愉しみだなと感じます。

私が小学生の頃、8時30分~45分までのちょっとした隙間時間に、「朝の学習」という時間が学校にはありました。そこでは先生たちが趣向を凝らし、漢字のミニテストやちょっとしたホームルームの時間などに充てられていたのですが、その中に読書の時間もあったことを、ふと思い出しました。登校して1時間目の開始までのそわそわした気持ちが、朝の読書ですーーっと落ち着きを取り戻し、集中力が高まるのです。大人になった今こそ、そうした時間があってもよいのかなと、この本を読みながら思いました。

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  • 出版社 ‏ : ‎ 平凡社
  • 発売日 ‏ : ‎ 2021/7/16
  • 著者 : 重森三玲
  • サイズ : 11.7 x 1.6 x 18.2 cm
  • ISBN978-4-582-53176-3 C0095