広報よもやま話Vol.2
PR活動のゴールがテレビ出演?!
前回は、PRに協力したくないおじさんへの対応について書きました。
今回はその逆で、「カンブリア宮殿に出たい」と勢いのある社員や経営陣から真剣に言われた時の対応について書きたいと思います。
普段、あまりテレビを見ない人ほど、少しの成功体験をもって「かっこよくテレビに取り上げられたい」と思ったりするものです。ある意味、テレビ出演は会社員の憧れ。だから、いいと思います、思うのは。
でも、広報担当としては他人事ではありません。ましてやそれが、会社の経営幹部だったりすると、心の中は穏やかではいられません。
中小企業の広報部には、広告予算がありません。だから、CMの対価でパブリシティ枠をもらうとか、テレビ局や広告代理店が気を使って用意してくれるといったことはまずありません。
だから、真面目に「カンブリア宮殿」に出ることがいかにすごいことかを語り、そのためのステップとしてこの先、何をすべきかを指南することになります。
たいていの人はその段階で、「そっか。大変なんだね…」と身を引いてゆくのですが、唯一、そんなことで諦めないのが経営者です。
広報が経営に口を出すとき、会社が変わる可能性に満ちあふれている
経営者が「テレビに出たい」とおっしゃったら、それに向かって走るしかありません。
やるべきことは少なくありませんし、取り上げてもらえるかどうかは相手次第ですから、約束できることは何一つありません。けれど私は、それについてはやる価値がある仕事だと思っています。
理由は主に次のような点です。
1.単なる「出たがり」ではない
テレビ出演の広報的な価値を整理して考えてみれば明らかですが、多くの場合、
会社や経営者自身の信用力を高めることが真の目的だったりします。
このことを経営者自身が自覚し、言語化できているかどうかは別にしても、
中小企業やスタートアップ企業にとって、第三者からの信用は非常に重要なことです。
2.会社の存在価値向上に向けた取り組みにつながる可能性がある
テレビ番組に取り上げてもらうには、「他社とは違う何か」、もっといえば、
「社会に役立つ何か」が必要になります。
創業者の思いや社員の誇りはもちろん大切ですが、さらに社会的な価値、つまり、
多くの人の役に立ったり、社会の課題を解決するといった会社の存在価値を磨く
取り組みにつながります。それをトップ自らが背負うことになるのです。
たとえ結果的にテレビで取り上げてもらえなかったとしても、やる価値はあると思いませんか?
とはいえ、特殊な技術や特許を持っているとか、あるいはニッチな業界でもリーディングカンパニー
だとかいうことがなければ、中小企業の社長のテレビ出演への道は、長く険しい道のりになります。
社長に向かって、時にはメディア側の目線に立ち、ダメ出しをしなくてはなりませんから、
なかなか会社組織の内側にいる正社員の人材には難しいところです。
経営者に寄り添えるプロ広報でなければ、実際にはできません。
だから私は、この、近からず遠からずのポジションから携わる広報の仕事が好きなのです。